補助人工心臓体験記

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VAD手術直後のICUで「患者は何をみていたのか?」

VAD手術直後のICUで「患者は何をみていたのか?」

VAD手術前後の記憶がごちゃ混ぜになっている部分もありますが、私が術後だと記憶している部分について触れてみたいと思います。

この記事は2015/12/15(VAD装着306日目)のリライト記事です

VAD手術後に目覚めたと思われる瞬間

気が付いたら私はどこかの部屋にいましたが、あまり覚えていません。
ただ、今まで聞いたことのないような不思議な音が沢山聞こえてきたことを覚えています。
その中で女性に話しかけられたところから色々と覚えています。

動かない
何で動かない?

人工呼吸器が挿管されていることも理解できていませんでした。

声がでない

「なぜ声が出せないのか?」と苛立っていたような記憶もあります。
身体は全く動かすことが出来ず、ただ天井を眺めていることしか出来ませんでした。

「トイレに行かせてほしい!」と懇願する私

まず私が感じたのが「便意」でした。
私はトイレに行きたくなり、何とかしてICUの看護師さんへ「トイレに行きたい」ということをアピールしていました。

もちろんそんなことは不可能なわけですが、とにかく私はトイレの便座に座りたくて仕方がなかったのです。

ベッドで寝たまま洗面器のようなものをお尻の下に入れられましたが、いつまで経っても便は出てこない。

暫くして洗面器のようなものが外される、これを何度も繰り返していたと思います。
看護師さんから「イシイさん、オムツを履いているからそのまましていいんだよ」と言われた。
私はトイレの便器に座りたいことを訴えていました。
まるで幼い子が駄々をこねているかのように抵抗していたわけですが、その抵抗もむなしくオムツへ垂れ流しました。

他人にお尻を拭かれた経験がないため、その状況がものすごく屈辱的でした。
少し身体を動かされる度に体も痛みました。
何度となく「お尻は拭かなくていい!そのままでいい!!」という意思を伝えようとしていました。
看護師さんに少し怒られていたような記憶も残っています。 

世にも不思議な「せん妄」の世界

その頃は数多くの不思議な光景が私を悩ませていました。
ずっと不思議な光景が続いていたわけではなく、突然変な光景が広がるのです。
しかし、その不思議な光景は自分にとっては現実そのもので「リアル」だったのです。

自分で自分を見舞う

私はこの病院のICUをよく知っていました、それは弟が同じICUに入っていた時があったからです。
そんな経験もあったからでしょうか、私は自分を見舞いに行ったのです。
ICUの入り口でマスクをして手を消毒し、廊下を歩いて、ICUのドアを入るのです

普通に見舞うこともあれば、天井から自分自身を見下ろしていることもありました。また、天井から見下ろしている自分を見ていることもありました。
まさにテレビで描かれる臨死体験の体外離脱的な状況です。

仕事人間?船の中で仕事をしている私

そもそも私は乗り物酔いが酷く、特に船はフェリーでもよってしまうほどです。
しかし、何故か私はフェリーのような大型船に乗っており、豆電球ほどの明かりしかない暗い客室の中でノートパソコンを操作していました。

ノートパソコンに映し出された画面は見慣れた会社のメールシステムで、私は上司宛に病状報告や仕事の引継ぎメールを打っていました。
しかし、一行入力するたびにdeleteキーを押したかのように文字が消えていきました。それを何度も繰り返していましたが、仕舞いにはメールではなく電話で上司へ連絡していました。

船に関する不思議な体験は何パターンもあり、心臓に関する学会に参加することもありました。
しかし、とにかく多かったのは仕事に関することでした。

サイケデリックで何もかもが回転する世界

これは少し時間が経ってから見た光景だと思います。
その世界への入り口は規則性のようなものがありました。

どこか一点に目の焦点を合わせると、その場所が渦巻きのように回りだしたりするのです。
まるでワープポイントのような感じです。

天井、カーテン、壁など色々な場所がグルグルと回り出しました。
そして、時よりサイケデリックでこの物とは思えないほどの色鮮やで美しい世界に入り込んでいました。

不快感があるわけでもなく「なんだろうなぁ・・・」という感じで、色々なところを見ていました。

恐怖!貞子の出現

サイケデリックな体験と同じ時期に現れたものがあります。
クリーム色のカーテンの隙間から誰かが覗いてくるのです。

老婆のときもあれば、貞子のように気味の悪い者が覗いている時もありました。
後者は時よりテレビ画面から這い出てくるように、窓から這い出てきました。
これらも何パターンかあったのですが、不気味なだけでなく強い恐怖を感じました。
この一連の不思議な世界で一番嫌な体験だったと思います。

あぶない人の目つき

ここまでは人工呼吸器をつけた状態での出来事です。
妻曰く、「目つきが普通じゃなかった」と・・・

術後に利用される医療用麻薬や自身の精神状況が、何とも不思議なせん妄の世界を見せていただのかもしれませんね。
もう二度と味わいたくない経験です。

それから徐々に意識がはっきりとしてきますが、そうすると次は身体的な辛さが現れてきました。

つづく

この記事の著者

Satoru Ishii
この補助人工心臓体験記の運営者です。
僕は拡張型心筋症で2015年2月にエバハートを埋め込み、心臓移植待機者になりました。
僕もいつかはVADを卒業する日が訪れます。(訪れました)
僕が成し遂げたいことは後継者を作ることではなく「当事者が声を上げていいんだよ」という雰囲気作りです。
これから先も地道に発信していきます。

COMMENTS & TRACKBAKS

  • Comments ( 3 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 以前コメントさせていただいた者です。
    別の方の記事でもコメントさせていただいたのですが、私がせん妄を起こした時も家族曰く
    「薬物中毒の人の眼つきってたぶんあんな感じだと思う」だったらしいです。
    今となっては笑い話ですが、当時の自分は普通に過ごしていたのですが現実は全くそうではなかったみたいです笑

    • そうですね、私も薬物中毒のバットトリップはこんな世界なんだろうな~っと思いました。
      本人は真剣なんですけどね・・・

  2. 娘はICUで脳出血した時マグマのような恐ろしい映像を見たと言ってました(๑╹ω╹๑ )

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