補助人工心臓体験記

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2021年のVAD装着者はどう変化する?コロナ禍の移植待機生活と「こだわり」

2021年のVAD装着者はどう変化する?コロナ禍の移植待機生活と「こだわり」

2020年は新型コロナウイルスの流行で日本人全員の生活が大きく変わりましたね。昨秋より入院している私はコロナ禍の街中を歩いたことはありませんが、2020年の一年間を振り返って来年への変化を勝手に想像してみます。

新型コロナは入院生活にどのような影響を与えたのか。

私が中国で「未知なウイルス」が猛威を振るい始めたと知ったのが2019年12月頃でした。中国武漢で次々と倒れていく人々の映像が映し出され、警戒心を持ってその後の情報をウォッチしていました。

その後、日本でも大きく報じられるようになり空港などでの水際対策が強化されはじめました。いつもの日本らしく入口(境界)を強固にしてシャットアウトする方法で、その強固な入口から侵入してきた場合の対策は後手に回っていた印象です。

日本ではクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での集団感染を持って一気にウイルスへの恐怖が現実のものとして捉えられたような気がします。
この頃はまさに港や空港という境界で食い止めるという作戦でした。

ちなみに、私が入院していた病棟は2月には「家族であっても面会禁止」という状況になりました。その状況は現在でも続いています。

性善説から性悪説にシフトすべきコロナ対策

私はIT関連の仕事をしていましたが、VADを装着する数年前からゼロトラスト・セキュリティということについて学ぶ機会が多くありました。はじめてゼロトラスト・セキュリティの概念を聞いた時は「確かに・・・」と思うことが沢山ありました。

ゼロトラスト・セキュリティの概念は、従来の信頼モデルである「信ぜよ、されど確認せよ」という性善説を前提としたセキュリティはもはや有効ではないため、「決して信頼せず、都度確認」すべきである、という性悪説を前提とした概念です。

コロナに関する暗いニュースが報じられる日々になってから、今まさに日本で必要とされているのがゼロトラスト・セキュリティーの概念ではないか?と思うようになりました。

つまり、身近な家族であれコロナウイルスに感染していることを前提として生活するということです。「マスクをする」「手洗いをする」「消毒する」「距離を保つ」といった多段階的な防御で守れることも多くあります。

2020年はコロナウイルス以外にも企業へのサイバー攻撃も沢山ありました。

  • 某総合電機メーカーへのサイバー攻撃で、防衛関係の機密情報が漏洩した疑いがあることが判明
  • 某ゲームメーカーが、サイバー犯罪集団からの不正アクセスを受け、顧客や取引先に関する情報が最大で35万件流失したかのうせいがあると発表
  • 某携帯電話会社の電子決済サービスを通じて、利用者の預金が何者かに不正に引き出されたことが判明

その他にも特殊詐欺などの被害も沢山ありました。

  • 学生が甘い話に乗ってしまい、個人事業主として嘘の確定申告をして「持続化給付金」をだまし取る
  • 新型コロナウイルスの特別低額給付金(10万円)のサイトを模倣したフィッシングサイトが相次で確認される

もはや性善説では乗り越えられない時代になってきています。少なくともコロナウイルス感染症対策については性善説ではなく性悪説にシフトすべきかなと感じています。

成長しない日本の情報リテラシー

「どこの地域でコロナが出た!」「あの病院にいるらしい!」などという出所の怪しい情報がSNSを通じて広がりました。
その他にも「トイレットペーパーが無くなる!」というようなデマも広がり、一時的に商品の流通が混乱するような状況が発生しました。

過去にも災害など差し迫った状況において、かならずデマの拡散が起きました。
不安をあおる悪意ある情報と、役に立ちたい気持ちから発信される間違いが入り混じっていましたが、どちらもデマはデマです。悪意がないから仕方ないとは言えません。

個人的にはSNSのリツイート機能はデマの重大震源地だと思っています。

そのリツイート、玄関先に掲示できますか?

私自身も信じたい情報を選びやすい傾向にありますが、その情報を信じる前に必ず一次情報を確認するようにしています。
皆さんも2020年にSNSに投稿した内容を見つめ直してみてはいかがでしょうか?

コロナ禍での火事場泥棒的行為

人々の恐怖の高まりに乗じてマスクや消毒液の買い占め、高額転売などを行う不届きものまで出てきましたね。
高額転売に限ってはコロナに限らず見境のない状況が続いています。

病院でもマスクが不足し、私も数枚の紙マスクを洗いながらローテーションで使う日々が続きました。
今はマスクや消毒液の供給も間に合っているようですね、何やら某所では怪しいマスクが大量に投げ売りされている状況のようですが…

切り抜き報道はあり?なし?

今に始まったことではありませんが、報道の「切り抜き」も目立ちましたが、人々にコロナウイルスへの恐怖と警戒心を抱かせるにはこの方法でよかったのではないかとも感じます。
しかし、あれだけ危機感を煽る報道をしていても、未だに騒ぐ人は騒ぐらしいですから、その切り抜き報道がベストな方法だったとは思いませんけどね。

日本の臓器提供はこのまましぼむのでしょうか。

私は3月頃からVAD生活が想像していたよりも「長期戦」になることを覚悟しました。そんななかでEVAHEARTのポンプがどこまで持つのだろうか?という不安も感じ始めました。
幸いにして私はまだ生きています。しかし、もし日本の臓器提供がしぼむようであれば私を含めて移植にたどり着けない人が増えることもあり得るでしょう。

実際に2019年と2020年を比べて日本の臓器提供がどのように変化したのかを調べてみました。
2020年12月の情報が公表されていないため、その分を差し引いています。

2020年の臓器提供件数は2019年と比べて約3割減という状況でした。確かに前年度から比べると減ってはいますが、私は意外にも奮闘しているようにも感じました。
入院していることもありコロナ禍の臓器提供についても色々な情報が入ってきまいました。

例えば臓器摘出に伴う医師団の派遣です。
緊急事態宣言を出している都市を跨いでよいのか?病院間の感染リスク、手術のリスクは?
正直、不安を感じるようなことも多くありましたが、それなりに上手く立ち回っている状況に少し安心しました。

来年はどうなるか分かりませんが、少なくともゼロになることは無いと思います。一人の心臓移植待機者としてはその日が来るまでしっかりと自分の芯を持って生きるだけです。

「ぼっち」移植待機生活をどのように乗り切る。

もしかするとVAD装着者にとっては「ぼっち」生活は縁遠い存在なのかもしれません。24時間介助者とともに過ごすという大原則があるので、むしろ「ぼっち」生活に憧れるVAD装着者も少なくないのではないでしょうか?

しかし、VAD装着者は社会という大きなくくりで見た場合には「ぼっち」な存在だったりします。しかし、今はSNSやビデオ通話などである程度は社会との繋がりを保つことができる時代になりました。

このコロナ禍という状況ではリモートワークへの理解が一気に進み、それらのツールを個人がそれぞれの生活で積極的に使うようにもなりました。
これはコロナ禍という状況がなければ、ここまで理解が進まなかったことでしょう。

だからと言って「コロナ禍があって良かった」とは言いませんが、人は工夫次第で何とかやっていけるということを証明したような気もします。
VAD生活のベストプラクティスは確立されていませんが、各々が置かれた環境で創意工夫した結果が積み重なることで確立されていくものだと想像します。

「苦しい」「辛い」と嘆くだけではなく、オンラインをフル活用して小さな成功体験を共有することで「みんな」でコロナ時代へ対応していきたいですね。

コロナ時代は移植待機生活の形もかわりますか。


私は入院しているのでコロナ禍の状況は想像の域を出ませんが、通院時の食事一つにとってもそれぞれが工夫されていることでしょう。
そして、生活基盤を支える収入源においても色々な変化を求められる状況にあるかと想像します。

誰しもが苦しい状況でしょう。
これまでの「こだわり」を捨てなければならないこともあるでしょう。

しかし、個人的には「こだわり」をすべて捨てないで欲しいと思います。
「こだわり」とは「気力」や「芯」に近いものがあると思っています、このコロナ禍という状況で自分を保つためには何かしらの「こだわり」を持つこともまた重要なことであると強く感じました。
ただ、その「こだわり」は必要最低限に絞る必要もあると思いますが…

イシイサトルの2020年はどうだった?

不要な「こだわり」を捨て、必要最低限の「こだわり」を貫き通した一年でした。今、私の中に残っている「こだわり」こそが芯であるような気がします。
来年も「こだわり」を持って生き残りたいと思います。


【年越し】井戸バド「超会議」 

貴方にとって今年はどんな一年でしたか?
それぞれの軌跡を振り返ることも大切ですが、年越しの瞬間をみんなで喜び、2021年のパワーへ変えてみませんか?

開催日時
12月31日 23:00~

この記事の著者

Satoru Ishii
この補助人工心臓体験記の運営者です。
僕は拡張型心筋症で2015年2月にエバハートを埋め込み、心臓移植待機者になりました。
僕もいつかはVADを卒業する日が訪れます。(訪れました)
僕が成し遂げたいことは後継者を作ることではなく「当事者が声を上げていいんだよ」という雰囲気作りです。
これから先も地道に発信していきます。

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