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「移植コーディネーターの日常」第八回誰でもVAD交流会 開催レポートVol.2

「移植コーディネーターの日常」第八回誰でもVAD交流会 開催レポートVol.2

交流会では日本臓器移植ネットワーク(JOT)が発行する、移植医療の歴史から現状までをまとめた資料集「日本の移植事情」を配布させていただきました。

本ブログ記事では冊子では知りえなかった内容を中心に、交流会の第一部「臓器移植、臓器提供について」をレポートしてみます。

この記事は2018/5/19(VAD装着1,192日目)のリライト記事です

とある移植コーディネーターの日常

交流会当日の朝、私は妻が運転する車で横浜の会場へ向かっていました。
その車内で、講演いただく予定の移植コーディネーターさんより現地到着が遅れるかもしれないとの電話がありました。

理由をお聞きしたところ、つい先ほどまであっせん案件の対応をしていたとのことです。
まさに映画「あさがくるまえに」やTVドラマ「コード・ブルー 3rdシーズン」のような出来事がこの日、この日本で起こっていたのです。

講演では移植コーディネーターの仕事環境を写真付きで紹介いただき、他では知ることのできないような内容が充実しておりました。

いつでも、どこでも寝られる技術

移植コーディネーターによる話の中で、今回の交流会で使うスライドも眠い目をこすりながら直前まで作成していたとのことです。

3日に一回はあっせん案件が発生し、移植コーディネーターは睡眠どころかシャワーすら入れない日が数日続く状況もあるそうです。
そんな時は「自分の身体を清拭」して何とかするようです。

移植コーディネーターはそのような環境で働いていることもあって、自然と「いつでも、どこでも寝られる技術」が身に着くそうです。
きっと「いつでも、どこでも寝られる技術」を駆使しなければ回らないほど、少ない人材で日々の業務を対応しているのでしょう。

この話を聞いて、移植コーディネーター業務に携わる方達の体とご家庭が少し心配になりました。

緊張感ただよう臓器提供の現場

「コード・ブルー」では臓器が摘出される手術室シーンが映し出されていましたが、あくまでテレビ向けの綺麗に整った手術室の印象を受けていました。

講演で使用したスライドでは実際の写真が映し出され、現場の慌ただしさや緊張感のようなものを感じ取ることができました。
とはいえ、「コード・ブルー」で描かれる内容は、実際の臓器提供の場をよく反映したものだと感じることもできました。

コード・ブルー 3rdシーズン」を見られていない方は一度レンタル、オンデマンド視聴してみることをおススメします。

臓器の摘出は誰が執刀するのか?

臓器摘出時は誰が執刀するのか?
そのような疑問を持ったことはありませんか?

臓器摘出は臓器受け入れ施設の医師がドナーのいる病院へ出向き、執刀します。
手術室内は派遣された医師たちで溢れかえるそうです。

また、臓器摘出前には手術内の全員で黙祷を捧げるそうです。
講演のスライドでは実際に黙祷している様子の写真が映し出され、その状況を詳しく説明いただきました。

この写真を見たときの感情を綴りたいのですが、自身の気持ちの整理がついていないためレポートでは割愛させていただきます。

臓器搬送ルートの確保や調整

摘出された各臓器は血流が無い状況で搬送されるため、臓器毎に虚血許容時間の目安が設けられています。

臓器虚血許容時間搬送許容時間
心臓4時間2~3時間
8時間6時間
肝臓、小腸12時間10時間
膵臓、腎臓24時間22時間

摘出に遅れが生じた場合は移植コーディネーターが搬送ルートなどの見直しや関係機関との調整を行うとのことです。

一番シビアな調整が必要となるのが虚血許容時間の一番短い心臓だそうで、遠方への提供となった場合はチャーター機(飛行機、ヘリコプター)が搬送手段として選ばれるそうです。

東京のレシピエントが遠方のドナーより心臓の提供がされる場合、飛行機で羽田空港、羽田空港から病院までヘリコプターというケースが多いとの説明でした。

臓器摘出の順番は、搬送許容時間の都合により一般的に心臓、肺、小腸、肝臓、膵臓、腎臓の順で摘出されるそうです。

臓器搬送費

心臓移植待機者の私として気になるのはその臓器搬送費用です。
ドナーとレシピエントの距離が近い場合は、その殆ど費用が少額に収まることもあるそうですが、遠方からの提供の場合は数百万円という費用が生じるとのことです。

すべての方に ありがとう

交流会で配布させていただいた資料の中には小冊子「think transplant」を3種類入れさせていただきました。
私とおなじく補助人工心臓を装着し、心臓移植を受けられた方の手記も含まれていまます。私もこの方より多くの力をいただきました。

改めてドナーの方、そのご家族と先生方、看護師さん、家族、友達全ての方に  ありがとう。

日本臓器移植ネットワークthink transplant Vol.25 心臓移植経験者の手記」より


目標としている心臓移植後の姿が見えるということは、移植待機者およびその家族にとって大事なことですね。

私もその一例になれるように出来ることを確実にやり、臓器提供の機会と巡り合うまでの日々を乗り越えたいと思います。
次回のレポート記事では、心臓移植経験者の講演やトークセッションの様子をお届けする予定です。

交流会レポート記事

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この記事の著者

Satoru Ishii
この補助人工心臓体験記の運営者です。
僕は拡張型心筋症で2015年2月にエバハートを埋め込み、心臓移植待機者になりました。
僕もいつかはVADを卒業する日が訪れます。(訪れました)
僕が成し遂げたいことは後継者を作ることではなく「当事者が声を上げていいんだよ」という雰囲気作りです。
これから先も地道に発信していきます。

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